翼の後ろにある黒い棒のようなモノって何?
さて飛行機に乗られた際、翼の後ろの方に黒い棒のようなものが何本か出ているのに気付いた方もおられるでしょう。今日はその謎の黒い棒の正体を探ります。
目次
黒い棒の役割は誤解されている?!
実は最初に言ってしまうと、あの黒い棒については大きな誤解が生まれているのです。
それは”雷”に関するものなのですが、お聞きになったことはありますか?
実際、飛行中に雷を受けることはあります。大きな衝撃と光、そして「ドン!」という音に見舞われます。
非常に怖い印象を受けると思いますが、飛行の継続には影響なく、この程度のことは計算されたうえで作られているので怖がることはありません。
実は、この雷を受けた時に機体表面から逃がす”避雷針”であるという話がありますが、
これは本来の目的ではなく、誤解なのです。
冬の大敵と言えば?
さてここで冬に起こるイヤーなものとは何でしょう?という質問をしましょう。
寒いのがイヤ、という方もおられるかもしれませんが、ドアを開けるときによくあるアレです。
そう
”静電気”
この静電気が発生するのはどうしてでしょうか?昔の理科の授業を思い出してみましょう。
静電気が起こる仕組み
簡単に説明すると、この静電気は物と物を擦り合わせることで電気が発生し、それが空気中に逃げるときにバチっと来るわけですが、その時は例えばセーターやコートといった素材と身体の間に電気が発生し、身体が電気を帯びてしまっているという状況です。
さて、一体これが飛行機とどのように関連するのでしょうか。
飛行機は高速で飛行する
飛行機はどこを飛んでいますか?
こんな質問は分かり切っていますよね?
そうです空中・空気の中を飛んでいます。
しかも時速800kmほどの速度で飛行しているので、先ほどのバチっとくる例のように、
静電気が発生します。
それは目に見えるコートと人体などではなく、
機体表面と空気の摩擦によって生じるものです。
静電気が飛行機に悪さをする?!
そうなのです。静電気は飛行機を運航するうえで、非常に厄介なのです。
飛行機は飛んでいるときは管制官と無線で交信をしています。
この無線通信、簡単に説明すると、”電波に乗せて音を届ける”というものです。
この”電波に乗せる”というのがポイントで、機体表面に静電気が溜まると、
この無線通信を行う際に雑音が混じってしまいます。
ちなみに、 通常の無線の音声は皆さんが思っている以上に綺麗に聞こえます。
ここに雑音が混じると管制官との通信の邪魔になるので、避けたいものなのです。
静電気を”なくす”にはどうする?
この静電気を消すにはどうしたらいいでしょうか?
正解は簡単ですよ?
そうです、空気中にバチっと逃がせてやればいいのです。
飛行機も実際にはバチっとまでは行きませんが、空気中に余分な電気を逃がしています。
実は翼の後ろに付いているのは、この”静電気を逃がす棒”なのです。
その名前は?
この”静電気を逃がす黒い棒”名前を
“Static Discharger”(スタティックディスチャージャー)
といいます。
日本語に無理やり訳すと”静電気放電装置”という名前です。
一見黒いですが、中は細い針金のような金属が集まっています。
しかし、静電気を逃がすような構造にできているということは、当然電気を通しやすいということですよね?
ここでポイントなのですが、一番最初の誤解の話に戻ります。
雷も電気です。
もし落雷を受けた場合、機体表面に沿って空気中に流れて行きます。
この空気中に流れていくときに、電気の性質上、どうしても電気が流れやすいへ流れて行ってしまいます。
この時に流れ”やすい”場所にあたるのが「スタティックディスチャージャー」なのです。
本来の目的ではないものの、落雷時には、、、
実は、このスタティックディスチャージャーは本来の目的ではないものの、実際に機体に落雷を受けると、その部分から空気中に流れやすくなります。
これは事実なのですが、本来は機体表面の静電気を流し、無線通信の雑音をなくすというものなのです。
機体に受ける雷の影響
飛行中に落雷を受けることは実は結構あります。
先ほど触れた通り、機体に落雷を受けた場合は、機体の表面を沿って電気が流れていきます。
機体表面に沿って流れるため雷が機内にあるコンピューターに達することはなく、飛行機の操縦システムに影響を及ぼすことはないように設計されています。